富士山珍道中
2013年 08月 01日
その頃、私は静岡市の美容室に勤務しておりました。
同い年の同僚のH君を誘って富士山に登ろうということになりました。
私は京都出身、H君は愛知県出身で、2人とも富士山は初めてでした。
登ったのは9月の富士宮登山道で、富士山には山小屋がたくさんあるのですが、どこも全く営業していませんでした。
実はこの日、台風が近づくかも・・・という情報も知ってはいたのですが、私はH君に「富士山は高いから登ったら雲の上に出るはず!」といい加減な事を言いました。
でも、当時は山に無知で本当にそう思い込んでいました。
登るにつれ雨風は止むどころか、どんどんひどくなってきます。
私とH君はゴアテックスではなく、安物のゴム引きのレインウェアを着ました。
このゴム引きというのは、外の雨は弾いても中の湿気を外に出しません。
かいた汗はそのまま中に充満します。
せっかくレインウェアを着込んでいても、中はビショビショでした。
台風がどんどん近づいてきて、富士山では下から風が吹き上げてきました。
私たちは若いこともあったのですが、下からの風のアシストを受けて、一般コースタイム6時間かかるところを、たった3時間で登ってしまいました。
ただ、風がどんどんひどくなってきて山頂の浅間神社奥宮まではなんとかたどり着きました。
そこから富士山最高点の測候所のレーダードームがかつてあった剣ヶ峰に行きたかったのですが、そこに行くためには、馬の背と言われる狭い尾根道を行かなくてはいけません。
私とH君は、避難させてもらうために気象庁の観測所を目指して、四つん這いになって馬の背を登ろうと思いました。
しかし、風がひどすぎて最後の50mほどの急斜面がどうしても進めず、あきらめて下山することにしました。
一般の登山道は溶岩による岩石だらけで、飛ばされて頭を打ちそうで諦めました。
私たちはブルドーザーが荷揚げをする広い道を這って降りました。
風がひどかったのは山頂近くだけで、少し降りると砂の上を走り降りる所に出ました。
この下りが面白いぐらいどんどん下れます。
ここが、大砂走りという場所だったのです。
私たちは調子に乗ってどんどん下りました。
ところが、標識を見逃したようで、たどり着いたのは富士山の御殿場登山口でした。
ここの標高は1440mで、車の置いてある富士宮登山口は標高2400mで、1000mも余分に下ってしまっていたのです。
御殿場登山口から富士宮登山口まで歩いて8時間と表示があり、とてもじゃないけど、そんなに歩く気力もありません。
私とH君はヒッチハイクをして富士宮口まで乗せてもらおうということにしました。
ところが、台風が近づいていてただでさえ車が少ないのに、ビショ濡れの男2人を乗せてくれる車などありませんでした。
ヒッチハイクをしてもほとんど車は通らないし、たま~に車が来ても20台ほど無視され続けました。
ところが、1台の車が私たちのかなり先に止まったのでした。
藁にもすがる思いで、その車に走り寄りました。
お兄さんが1人で運転していた車でした。
事情を話すと、富士宮登山口まで乗せてくれるとの事でした。
私はこのお兄さんが、仏様のように後光が差しているように見えました。
お兄さんのおかげで、無事富士宮登山口に着いて、私とH君の富士山珍道中はようやく終わったのでした。
その後、南アルプスや北アルプスなどいろんな山に登りまくった私ですが、山を知らない最初はこんなものでした( ´д`ll)