周防龍一の死「カーネーション」
2012年 03月 29日
女手1人で気丈に振舞う糸子であったが、その淋しさを癒してくれるのが長崎から出てきたという紳士服職人の周防龍一の存在だった。
糸子と周防、二人はまるで磁石が吸い寄せられるように惹かれ合う。
そして、たった一夜のみの逢瀬の後、糸子は周防と距離を置く。
隣の町に周防がいるのだが、糸子は周防には会わずにずっと耐え忍んでいた。
周防の奥さんが亡くなってから、周防龍一が故郷の長崎に帰ってしまう時も、糸子は会わなかった。
その後数十年が経過して年老いた糸子ではあったが、糸子の心の中にはいつも周防の存在があった。
東京の病院での糸子の公演の世話人の中に、24歳まで岸和田に住んでいたという女性に出会う。
その女性、10歳までは長崎に住んでいたという。
女性の死んだ父が、以前糸子に世話になったと聞き糸子の目の色が変わる。
「おたく、どちらさんですか?」
「周防龍一の娘です」
糸子の手がわなわなと震える。
もう、周防龍一はいない・・・
そう思うと、糸子の悲しみは次第に湧きあがってきて、堰を切ったように流れ出してゆく。
糸子の胸に再び大きな穴が空いた・・・